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このレースからマクラーレンにもフォードエンジンのシリーズⅦが供給されることになった。
続くドイツGP以降ではシリーズⅧも使用可能になり、
エンジン面ではベネトンと全く同じ待遇を受けることになった。
これもロン・デニスの政治手腕の賜物か? 金曜予選は3位だったが雨のため参考記録程度。 土曜予選ではプロスト、ヒルのウイリアムズの2台が激しいPP争いをする一方で、 セナは同じフォードエンジンを搭載するベネトン、シューマッハーにも1.5秒もの差をつけられ4位。 マクラーレンのシャシーは相変わらず高速コーナーで不安定な動きをしているようだ。 メカニカルグリップ不足を補うためにウイングを立てることを余儀なくされ、 それによってストレートのスピードが鈍った。 革新的なベネトンのシャシーとの差が改めて浮き彫りにされた。 決勝レースではこの年お馴染みになるセナのロケットスタートで、 シューマッハー、プロストをかわし一気に2位へ浮上。 ヒルがトップを奪い逃げる一方で、セナはプロストを絶妙なライン取りで封じ込めていく。 このときのセナのドライビングは危険だったとする意見も数多く聞こえたが、 不思議と私は安心して二人のバトルを見ていられた。 もちろん、相手がプロストだったから接触事故にならなかった、とも言えなくもないが…。 セナとプロストの息詰まる「超一流」のバトルはしばし続く。 特に、マシン半分以上もプロストがリードしているにもかかわらず、 アウトラインから大きく回り再びポジションを入れ替えるセナの芸術的なドライビングが印象的だった。 しかしマシン差は如何ともし難く、7周目にプロストにかわされ、 さらにシューマッハーにもしばし抵抗した末に10周目に先行を許した。 レースはその後、不必要な?セーフティーカーが入ったりするが、 セナの順位には関係なく、誰とバトルすることもなく4位を走行。 中盤から終盤にかけての42周目に、 親子2代の夢、地元イギリスでの初優勝を狙うヒルがエンジントラブルで脱落。 セナは労せずして3位にポジションアップした。 しかしこのまま3位でフィニッシュするかと思われたファイナルラップで、 セナのマクラーレンはガス欠に見舞われる。 記録上はトップと同一周回のパトレーゼ(ベネトン)とハーバート(ロータス)に抜かれた形になり、 セナは周回遅れ・5位完走扱い。 2年前の1991年のシルバーストンと同じような展開になってしまった。 「コンピュータはまだ燃料が残っていると表示していた。 それを抜きにしても週末ずっと安定性の問題に悩まされていた。 それを克服するために、目いっぱいウイングを立てた。 そのせいで、ストレートのスピードが落ちてしまったけれどね。 シューマッハーに抜かれたのもそのためだ。」 (「生涯 アイルトン・セナ」等より) エンジンは考えられる最高のものを手にすることができたものの、 シャシーの問題はすぐに解決することは困難で、改善までしばしの時間を要することになる。 しかしそんな不利な状況の中でも、 セナはレーサーとしての本能に従い、 目の前の敵を倒すためにスタートから全力で走っていくのだった。  | 
ドライバー  | 
チーム  | 
タイム・備考  | 
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PP  | 
アラン・プロスト | ウイリアムズ・ルノー | 1'19"006 | 
2位  | 
デイモン・ヒル | ウイリアムズ・ルノー | 1'19"134 | 
3位  | 
ミハエル・シューマッハー | ベネトン・フォード | 1'20"401 | 
4位  | 
アイルトン・セナ | マクラーレン・フォード | 1'21"986 | 
5位  | 
リカルド・パトレーゼ | ベネトン・フォード | 1'22"364 | 
6位  | 
マーティン・ブランドル | リジェ・ルノー | 1'22"421 | 
ドライバー  | 
チーム  | 
タイム・備考  | 
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優勝  | 
アラン・プロスト | ウイリアムズ・ルノー | 1゚25'38"189 | 
2位  | 
ミハエル・シューマッハー | ベネトン・フォード | 1゚25'45"849 | 
3位  | 
リカルド・パトレーゼ | ベネトン・フォード | 1゚26'55"671 | 
4位  | 
ジョニー・ハーバート | ロータス・フォード | 1゚26'56"596 | 
5位  | 
アイルトン・セナ | マクラーレン・フォード | 1Lap、ガス欠完走扱い | 
6位  | 
デレック・ワーウィック | フットワーク・無限ホンダ | 1Lap | 
FL  | 
デイモン・ヒル | ウイリアムズ・ルノー | 1'22"515 |