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長く続いたヨーロッパラウンドも、このポルトガルが最終戦。
前年ここで初めてのPP・優勝を決めたセナがエストリルに帰ってきた。
ブラジルはポルトガル語圏であり、カート時代から親しんだポルトガルは、セナ自身お気に入りだったようだ。 ホンダの総監督・桜井淑敏氏は翌シーズンからロータスにもエンジンを供給することを発表した。 セナはホンダのパワーに惚れ込み、ホンダもセナの能力を高く評価していた。 後にセナとホンダは仕事を超えた特別な関係になっていく。 さらにこの週末、今をときめくプロスト、ピケ、マンセル、セナが4人揃っての記念撮影。 セナはこの時すでに完全にトップドライバーとして認められ、 強力なライバルとの戦いの中で「真の強さ」を身につけていったような気がする。 予選は目まぐるしい展開。 金曜予選は5位に終わったセナだったが、土曜になると熾烈なPP争奪戦。 まずはセナがトップタイムをマークすると、その後マンセル(ウイリアムズ)→ベルガー(ベネトン)→プロスト(マクラーレン) →ファビ(ベネトン)が次々とタイムを更新する。 セナは残り7分となったところで、ターボチャージャーを交換し、再びコースへ。 セナはそのエンジンでスタートした瞬間に、マシンの新しい加速を感じ、PPを確信したという。 その確信通り、セナは完璧なラップを刻み、最終的には2位マンセルに0.8秒の差をつけるPPを決めた。 決勝レースでは、フロントローに並んだマンセルが好スタートを切り1コーナーを奪っていく。 マンセルとセナは3位以下を引き離し、周回を重ねていった。 中盤のタイヤ交換後、セナは後方からピケ(ウイリアムズ)に攻められる。 予選では自らの腕でスーパーラップを決めてPPを獲得したセナだったが、 マシンの総合力が試される決勝レースではホンダエンジンを擁するウイリアムズに分があった。 しかしセナはコース特性や周回遅れを利用して、ピケを封じ込めていく。 「ブロックの名人」とも呼ばれたセナのマシンコントロールはこの頃すでに完成していたのかもしれない。 ただセナのブロックは決して露骨なものではなく、正しくは「ライン取りの名人」ではなかったかと思う。 終盤になるとピケからの攻撃も退け、セナは余裕をもって2位を走行していた。 しかしファイナルラップでガス欠が生じ、ユルユルとコントロールラインへと向かう。 結局、その間にプロストとピケにかわされ、1周遅れの4位に終わった。 ウイリアムズやマクラーレンに比べると総合力に劣るマシンながら、 開幕からポイントを重ねてきたが、これでチャンピオンの可能性は完全になくなった。 しかしそのような状況だからこそ、ガソリンをギリギリまで切り詰め、ライバルに対抗していったのかもしれない。  | 
ドライバー  | 
チーム  | 
タイム・備考  | 
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PP  | 
アイルトン・セナ | ロータス・ルノー | 1'16"673 | 
2位  | 
ナイジェル・マンセル | ウイリアムズ・ホンダ | 1'17"489 | 
3位  | 
アラン・プロスト | マクラーレン・TAGポルシェ | 1'17"710 | 
4位  | 
ゲルハルト・ベルガー | ベネトン・BMW | 1'17"742 | 
5位  | 
テオ・ファビ | ベネトン・BMW | 1'18"071 | 
6位  | 
ネルソン・ピケ | ウイリアムズ・ホンダ | 1'18"180 | 
ドライバー  | 
チーム  | 
タイム・備考  | 
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優勝  | 
ナイジェル・マンセル | ウイリアムズ・ホンダ | 1゚37'21"900 | 
2位  | 
アラン・プロスト | マクラーレン・TAGポルシェ | 1゚37'40"672 | 
3位  | 
ネルソン・ピケ | ウイリアムズ・ホンダ | 1゚38'11"174 | 
4位  | 
アイルトン・セナ | ロータス・ルノー | 1Lap | 
5位  | 
ミケーレ・アルボレート | フェラーリ | 1Lap | 
6位  | 
ステファン・ヨハンソン | フェラーリ | 1Lap | 
FL  | 
ナイジェル・マンセル | ウイリアムズ・ホンダ | 1'20"943360 |